レザーを着て死ね

夏でもレザー着てる人のブログ hustle & hustling

ヌーさん

今日、ポストを覗いたら一枚のハガキが入っていた。

 

◯◯小学校 同窓会のお知らせ

 

◯◯小学校・・・

忘れたくても忘れられない思い出が蘇る。クラスメイトに坂西君という子がいた。坂西君はいつも「ぬ‥ぬーぬっぬ‥ぬ」と呟いていて、この文明が成熟した日本で「ぬ」一文字だけで意思疎通を図ろうとする子だった。常に一人で行動し、授業中も「ぬぅ‥」しか言わない。下校のチャイムが鳴ったと同時に「ヌーーーーー!」と気笛のように叫びながら走って帰宅。登校の時もいつも遅刻ギリギリで後ろから「ヌーーー、ヌー---!」と奇声をあげながら腕を風車のように回し風の様に走り抜けていく。そんな素材を小学生がほっておくわけがない。学校の問題児の集まり野口一派は坂西君をそのままなんの捻りもなく「ヌーさん」と名付け、ヌーさんを逆に「ヌーーーーー!ヌーーーーー!」と威嚇しながら木の棒を持って追いかけまわしていた。

ある冬の日、ヌーさんがおニュ-のフェザーダウンを着てきたことがあった。おニューの服を着たヌーさんは明らかにいつもよりテンションが高かった。それが気にいらなかったのだろう。野口にダウンの繊維の隙間からでてるフェザーを来る日も来る日もむしりとられ続けられていた。その作業は根気よく1カ月続けられ、2月の一番寒い時期にはヌーさんのダウンはペラペラになっていた。

これは遊びにしても限度を超えているような気がしたが、ヌーさんは「ぬ」しか言えないので先生達もヌーさんの状況に気がつかなかった。

その冬、校外学習でスキーに行った。スキー初体験の私は、常にへっぴり腰で生まれたての幼虫の様な動きをとることで、いつもの様に道化に徹していたのだが、その一方でヌーさんは薄っぺらいダウンを着て、「ヌーーーーーー!」と奇声をあげながら山頂からプロ並みのライディングを披露、ゲレンデの注目を一身に集め一躍時の人となっていた。

数時間後、板を並行にすれば、ある程度真っ直ぐ滑れることを知り、気を良くした私は小山からただ真っ直ぐ滑りおりるという行為を初めて覚えた指しゃぶりの様に何度も繰り返す。

完全に調子にのった私はゲレンデで1番高い山から滑ることに。勢いよく滑っているとコース上にヌーさんがのそのそ歩いているのを発見。が、真っ直ぐ以外の選択肢のない私は早々に諦め一切勢いを殺すことなくヌーさんに激突。

ヌーさんは「ヌーーーーーーーーーーー!」と雄たけびを上げるのかと思いきや、「痛いぃぃぃぃぃー!」と絶叫し、心配して駆け寄ってきた先生に「こいつがぶつかってきた」と割とはっきりした口調で告げ口してた。

 

その後、風の噂でヌーさんが高校で本格的にアメフトをやり始めたことが広まり、これまで開催された同窓会の参加率は異常に低いものとなっている。

http://madwhizkid.hatenablog.com/entry/2016/12/08/005836