レザーを着て死ね

夏でもレザー着てる人のブログ hustle & hustling

早稲田×学生運動×島耕作

モーニング連載の看板作品島耕作シリーズf:id:madwhizkid:20161123015816j:image

1983年から連載を開始し、はや30年超。この間に本作品の主役である島耕作は課長→部長→平取→常務→専務→社長→会長へと順調に出世街道をひた走った。会長島耕作の次は相談役島耕作か?経団連会長島耕作か?衆議院議員島耕作か?などと、本物のパナソニック会長よりも進退を噂される島耕作だが、もう会長の時点で年齢は67歳(1947年産まれ)。そろそろ、盆栽弄り島耕作やボランティア島耕作を見たいものである。どうせどんな環境にいようが島は何かにつけてセックスをするだろうが。

島耕作は作者の弘兼憲史氏と同じ年齢である。この時代は団塊の世代、焼け跡世代、そして全共闘世代と呼ばれる。この時代の若者を語る上で外せないのは、やはり学生運動になるのだろう。

弘兼氏と島耕作早稲田大学法学部出身である。早稲田と言えば左翼の総本山とも言われた大学だ。左翼とは、革命を起こし、日本を良くするという考えが根底にある。いわば反権力。権力を監視する役割を果たしているマスコミへの就職が強いのは最早伝統だ。現在モーニングでは、島耕作が早稲田に通っていた1966〜1970にスポットを当て、学生島耕作を連載している。この頃の早稲田はというと、正に学生運動が盛り上がっていた頃である。そんな激動の時代にあっても、周りに左右されず相変わらずひょうひょうと何事もスマートにやり過ごしていくクソ腹立つ島の様子が描かれている。

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私のような若造には全く想像もできないが、大学生が権力に対して声をあげ、ゲバ棒、ヘルメット、火炎瓶で機動隊とやりあっていた時代だ。当時の様子が筆者の体験と共に描かれており興味深い。どうでもいい島の脱童貞話もある。

 

 

西の左翼の巣窟立命館大学にはまだ内部闘争で殴り殺された学生の血のシミが残った教室があるんだとか。

 

実際に気になったので父に色々聞いてみた。私の父は現在66歳、1950年昭和25年産まれだ。島耕作の3つ下になる。同じく早稲田出身だ。同じ空気を吸い、同じ時代を駆け抜けたと言える。あまり多くを語りたがらないが学生運動をやっていたという話も聞いたことがある。父にこの漫画を見せたところ、非常に懐かしがっていた。時代背景的には弘兼氏世代よりも自分達の世代にマッチするとのこと。友人と飲みに行けばマルクス主義について熱く語り、エレキ先輩のようにヒッピースタイルの影響からか、ラッパズボンを履いていたそうだ。卒業アルバムも見せてもらった。

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早大闘争

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活動家の資金源になっていたと噂の早大

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 伝統の早慶戦

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こらすげえ!俺の卒アルと全然違う!本当にゲバ棒とか機動隊とかいるんだ!思想強すぎ! 中々貴重な資料。

 

卒業アルバムからして今の大学生とは気合いの入り方が違う。大学全体に変な活気がある。労働者は団結し資本家にとって変わるべきであると説いたマルクスマルクス主義の影響を受けた学生たち。良くも悪くも日本の未来を若者たちも考えていた。しかし、所詮は周りに流され、ファッション感覚でやっていた者がほとんどだった。資本家を敵視してきたにもかかわらず、大学四年生にもなると、若気の至りと言わんばかりに手の平を返し、長髪を切り、あれ程嫌がっていた資本家に従順になるために就職活動にいそしむ。我が家の父はというと、やはり傾倒していたのだろう、マスコミを希望していたそうだ。が、不採用だったためにメーカーに就職、そして順調に出世し会社の重役に。いまや自分が毛嫌いしていた資本家となっていた。そんな矛盾。こんな綻びが社会主義国家がうまくいかなかった歴史を証明しているんだろうか。

  

 もっとマルクス主義共産主義を知りたい人はナニワ金融道の作者青木雄二について調べてみて欲しい。特に傑作は悲しき友情。これは名作中の名作。一般的に青木雄二と言えばナニワ金融道だが、個人的には悲しき友情に軍配があがる。

 

 

ドヤ街で生活する漫画家志望の若者とオッさんの友情を描いたこの作品。この若者は学生時代、学生運動に傾倒し、周りがどんどん就職をする中、最後まで自分の思想を貫きドヤ街に流れ着いた。観念論と唯物論をテーマとし、低所得者が理想と現実の中でもがくリアルな描写が非常に面白い。

この話には世の中の真理がある。青木雄二は。平等を求め、富の集中を嫌った。彼は共産主義が理想の社会だとはっきり言う。しかし彼の書く漫画は、理想的な綺麗な世界ではなく、むしろ裏に潜む金のエピソードばかりだ。結局は青木雄二も悟っているのだ。理想だけでは飯を食えないことを。結局現実(金)のジレンマからは抜け出せないことを。

そして彼もまた、漫画家で売れた後、その富を手放そうとはしなかった。

 

理想と現実。

 

 近年、ネットではネトウヨという言葉がうまれ、若者を中心に日本人が右翼化していると言われる。左右の違いはあれど、全共闘世代と流れは同じなのかもしれない。若者は大人に比べて人生経験が少ないので極端に走る傾向があるのか。

この複雑化した社会で、全ての事象を右や左に分けることになんの意味があるのだろう。ミクロに一つ一つの事象を検討していかなければならないんじゃないか。極端な右翼思想や左翼思想なんてただのレイシストそのものではないか。極端は良くない。世の中単純な二元論では割り切れない。

 

だって窪塚洋介が言ってた。

 

右翼左翼どちらもあるから鳥は高く飛べるのだと。

 

右左どちらの意見もしっかり取り入れ、自分の中で消化することで初めて自分の意見が意味あるものになるのだ。だから窪塚が言う、右翼左翼を持たなければ高く飛べないとは、まさに中道的思想こそが至高と言っていると私なりに解釈した。私も概ね賛成である。

 

しかし、そんな中道こそ高く飛べるとのたまった彼がマンションの9階からアイキャンフライ!と叫んだもののまっさかさまに落下したことについては何も言いたくない。