レザーを着て死ね

夏でもレザー着てる人のブログ hustle & hustling

デリバリーシンデレラ

大学の頃、「俺は顎がしゃくれてるんやない、顎以外がくぼんでるんや」と、豪語する横顔が花王のマークそっくりのタンタンという友人がいた。東洋人離れしたバタ臭い風貌と汚ならしく染め上げた金髪のせいで近隣住民から怪しい外人がウロついてる!と警察に通報されたり、「ここが変だよ日本人」のインタビューを受けたら外人側の意見としてオンエアーされていたり、エアーウォーク着てたら通りすがりの黒人に「地に足つけろよ」と言われたり、バイト先で「円を稼ぎにきたの?」と言われたりと、何かと一緒にいると事件を呼び寄せる子だった。

そんなタンタンと私は幸か不幸か同じ誕生日。
その日、家族は朝一から旅行に出かけると言うのでタンタン宅で二十歳の誕生日パーティーをやることになった。
金色や銀色の折り紙で精一杯飾り付けられた狭い居間で二人の誕生パーティーがしめやかに開催された。主催者のタンタンの「ハッピーバースデートゥートゥー(誕生日おめでとう二人!の意味らしい)」というくだらない乾杯の音頭を皮切りに二人きりの成人式は始まった。

桃太郎電鉄や黒ひげ危機一髪で、さっそく童心を取り戻そうとする二人。大人になる気はない。

当然盛り上がることもなく刻々と時間は過ぎていき気づけば夕方5時。もうやることもないので帰ろうとすると、タンタンが「せっかく大人になったんやから大人にしかできんことせん?」と言いだした。「大人にしか出来ないことって何?」と返すと、待ってましたと言わんばかりに引き出しからピンクチラシを数枚取り出してきた。そのピンクチラシはデリバリーヘルスのものだった。どうやら今回の会はこれが目的だったようだ。

タンタンいわく大人になるということは、風俗に通うということであり、風俗も知らない男は男として未熟と言いきる。いきまくタンタンに男2人でデリヘルは呼べるのか?という疑問を口にすると、一人は普通にプレイを行い、一人はクローゼットの中に隠れて観賞するという壮大な計画を説明された。もしバレたら大事になると思いつつも性欲と好奇心に負けデリバリーヘルスを呼ぶこととなった。

早速じゃんけんでどっちがプレイするのかを決めることに。結果、勝利するが根っからのヘタレの私は「勉強させてもらいます」と言い残しクローゼットに静かに身を隠した。

耳を澄ましクローゼットの外に全神経を集中させるも胸のドキドキしか聞こえない。デリヘル嬢の到着をひたすら待った。数十分後ピンポーンとチャイムが鳴り響く。私の鼓動が更に早くなる。

 

来た

 

タンタンが玄関へと迎えに行く。どんな子が来たんだろう、歳はいくつぐらいかな?風俗嬢ってどんな人がやるのかな?どんなことするんだろう?どんなどんなどんなどんな‥。

 

頭の中であれこれ妄想していると「え?なんで帰ってきたん?」と戸惑うタンタンの声で我に返った。

 

「お母さん途中でお腹痛くなったんよ、だからお父さんとお兄ちゃん置いて帰らしてもらったわー」と聞き慣れたおかんの声。

 

これはマズイ。

 

「友達もう帰ったん?」

 

「いや、ちょっと‥連絡ぐらいしてやー!」と焦るタンタン。

 

玄関口で揉めていると

 

ピンポーン

 

再度チャイムが鳴った 

 

今度こそ来た
 
最悪のタイミングでデリバリーヘルス嬢が来た

 

 

「誰その子?」と母親の声。

 

「あっ、えーちょっとごめん。えーこっち着て」と、しどろもどろになりながら嬢を部屋に引き入れてくるタンタン。

 

「ちょっとまちぃ!」と怒鳴り声に近い声で叫ぶ母。

 

この状況は凄い。何故か私のち○こはビンビンだ。

 

部屋には嬢、そしてタンタンにビンビン。

 

タンタンは「あーやばい、どうしよう。どない言い訳しようヤバイヤバイ」とパニック。

 

「大丈夫ですかー?」と呑気なデリ嬢。

 

するとドンドンとドアをノックする音が聞こえる。 

 

「あーーー!!やばいやばいやばい」と小声でつぶやきながら頭を抱えるタンタン。そして何故か興奮が最高潮を迎えるクローゼットのビンビン。

 

そして、おかんが強引にドアを開き入ってくる。

 

 

お茶と和菓子持ってきた。

 

照れくさそうにお茶と和菓子を食べる二人をクローゼットから覗きながら私は果てた。

 

いつもの帰り道がすこし違ってみえた。

 

 

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